第七話
著者:shauna


「じゃあ、私、お酒の追加注文してきますね。」

そう言って、なんとか核ミサイル製造工場を抜けだしたドローアは、廊下に出てから壁に手を付いて「はぁ〜」とマリアナ海溝並に深いため息をついた。


 おかしい・・・


 確か今は慰安旅行中のはずだ・・・

 なのに、なんでこんなに気疲れしなければならないのだろう。

 後ろを振り向けば、早々に宴会場から風呂場に向かう聖戦士+聖蒼貴族の面々が目に入った。しかも、ミーティアやサーラは、両手に飲み残しの徳利だの食べ残しのおつまみなどを山のように抱えている。

 さらに、泣き上戸が祟って、その場にうずくまったまま動けなくなっているアリエスの襟首を掴んでズルズルと引っ張って行っているのはあろうことかセレナだった。

 「温泉! 温泉!! (ミーティア)」
 「ここって確か混浴なんだよね〜(サーラ)」
 「タオルで前を隠すのって確かマナー違反なんだよな〜!!!(アスロック)」
 「そうだともわが友よ!!!女も隠すのは禁止だぞ!!!!(ファルカス)」
 「え〜?それってセクハラですよ〜?(シルフィリア)」 
 「そうだそうだ!!!!(セレナ)」

 ・・・・・・・・・・・・などと・・・

 自分達が何を言っているのか録音して明日聞かせてやりたい酔っ払いどもが去って行く・・・
 ってか、いつもと発言がかけ離れ過ぎていて、喋るたびに誰が話しているのか名前を書かなければならない作者の苦労も考えて欲しい・・・
 
 もう頭が痛くて仕方が無いのだが、少しでもあの人たちを苛立たせると、それこそ下手をしたら世界の崩壊に繋がりかねないので、ドローアは足早に酒を注文すべく厨房へと急ぐのであった。

 



 もしかしたら、風呂に着く頃には少し酒が抜けて多少はまともになっていてくれるかもしれないし・・・




 でもって・・・その核爆弾達が行った先。
 ドローアの望むも虚しく、全員の破綻ぶりにはさらに拍車がかかっていた。

 勿論、場所はこの旅館自慢の露天風呂である。

 大理石を様々な形に削ってから湯の成分で溶けてしまわない様にコーティングの施されたその情景は滝壺にも似ていて、かなり風情がある造りであった。
 
 そして、旅館によっては湯船を複数用意したり、真ん中で仕切るなどして男女を分けるのが一般的であるのだが、ここでは男女を問わない混浴の様式をとっていた。

 その為、通常なら男はともかくとして、女は浴衣を着用したままの入浴が一般的であり、男性陣の視線を気にしながら女性陣が入浴するという何とも言い難い場面が展開されるはずなのだが・・・



 「それにしてもぉ〜!!(ミーティア)」



 幸か不幸か、そんな常識的な判断が出来る者は誰一人としていなかった。アスロックもファルカスとアリエスが傍にいるというのに、ミーティア達女性陣は全く気にする様子もない。浴衣なんてもちろん着てない。一方のアスロックとファルカスとアリエスもうら若き少女の裸体が傍にあるというのに一切欲情する様子がないどころかそちらを見る様子すらない。



 「サーラとファルカスは中々恋人関係進展しないわよね〜(ミーティア)」
 
 どこから持って来たのか、女性陣の中央には桶が浮かんでおり、その中には徳利とお猪口に加え、手でつまんで食べられるスナックが乗っていたりする。

 「それもそうね〜・・・」
 と頷くのはセレナだ。

 「でもそれを言うのなら、ミーティアだってそうじゃない? アスロック君との関係はどうなの? (セレナ)」
 「ふぇ? あたし? 勘違いしないでよ!!! あたしとアスロックはそう言う関係じゃないから!!! 大体、特定の恋人がいないってゆー観点ではお姉ちゃんも一緒でしょ!!! (ミーティア)」
 
 「そ・・・それは(セレナ)」

 「仕方ありませんよ〜・・・私やサーラさんはともかく、スペリオルの王女様方は女性らしさが足りませんからね〜・・・(シルフィリア)」

 「なんだと〜(ミーティア)」「なんですって〜(セレナ)」

 ちなみに男達はというとアリエスは相変わらず目の前の岩に向かって一人自分の駄目さを語っており、アスロックとファルカスは勇者のスートは熱血の炎であるべきかそれとも未来を照らす光であるべきかでモメていた。ちなみにアスロックは炎派でファルカスは光派なのだが、傍から見れば本当にどうでもいい疑問である。


 「やっぱ、女の子に大切なのは母性と包容力ですって・・・(シルフィリア)」

 「じゃあ、何? 私やお姉ちゃんには母性とか包容力が無くって、反対にあなたやサーラにはあるっていうの!!! (ミーティア)」

「ありますよ〜?ね〜(シルフィリア)」
「ね〜。(サーラ)」


笑顔で顔を見合せるシルフィリアとサーラ。


 「どこに!!!」





 「「胸とか〜?」」

 と誇らしげに同時に胸を反らせる2人。

 丁度セレナとミーティアの鼻先に胸を突きつけられる形になっている。
 
 「くっ・・・(ミーティア)」「くぅぅぅう・・・(セレナ)」

 悔しげな声を洩らすミーティアとものすごく悔しげな声を洩らすセレナ。こればかりは言い換えせなかった。幼児体型とも言えるミーティアとよく言えばスレンダーなモデルのよう・・・悪く言えば凹凸の少ない体型のセレナに対して、一流グラビアアイドルとしても通用しそうなスタイルのサーラと超美乳のシルフィリア・・・どう贔屓目に見ても、勝負は明白についてしまっているわけで・・・。




 「「胸とか〜? 胸とかぁ〜? 胸とかぁぁ〜!? 」」


 「くっこれ見よがしに・・・・・・(ミーティア)」

 「こんな屈辱を受けたのは・・・生まれて初めてだわ・・・(セレナ)」

 「男の人ってぇ〜・・・胸とか好きだって聞きますしぃ〜(シルフィリア)」

 「あ。でもスレンダーな長身が好きって男もいるわよ。(サーラ)」

 「なら、セレナ様も合格ですねぇ〜・・・(シルフィリア)」

 「まったく・・・でも、大きければいいってもんでもなくって、形や触り心地や感度も大事らしいわ。(セレナ)」
 
 「なら、シルちゃんは合格ね。形も感度も触り心地も極上のはずよ。なにせ・・・(サーラの言葉なのですが、これ以上はネタバレ&管理人に殺されるので削除。)」

 「ってことは、ミーティア様の一人負けですねぇ〜(シルフィリア)」

 「そうなるわね・・・(サーラ)」

 「大丈夫ミーティア・・・需要はあるはずよ。(セレナ)」

 


 「だ〜ま〜れ〜〜!!!!!!!!」


 怒りをあらわにするミーティア。

 「サーラはともかくとしてシルフィリア!!!さっきからこれ見よがしに揺らしやがって!!!私だって、その気になればあなたなんて及ばない程の形と大きさと感度を!!!」
 「あらあら・・・こんなに控えめなのにですかぁ〜?(シルフィリア)」
 「つつくな!!!(ミーティア)」
 「でも18歳という年齢を考えると・・・もう成長する見込みは・・・(サーラ)」
 「うぅ・・・」

 もうなんだか悔しすぎて泣き出してしまうミーティア。

 そんな彼女に女神の微笑みを浮かべながらセレナがポンッと肩を叩いた。

 「大丈夫よミーティア・・・」
 「お・・・おねぇちゃん・・・」
 「貧乳にはね・・・希少価値とステータスって言う利点もあるの・・・」

 発せられた言葉は悪魔だった。
 
 「ぬぅぐわああ!!!!!お姉ちゃんのバカーーーー!!!!」
 「それに大丈夫。あなただって巨乳になれるわ。ベッドの中で夢を見ている間限定だけど・・・」

 もう次から次へと姉妹喧嘩ではすまされない酷い言葉がセレナの口から出続ける。


 「もうアッタマきた!!!」



 ミーティアはそう言うと徳利を持って一気に立ち上がる。
 
 「見てなさい!!!私だっていつかは、ぜっっっっったいにシルフィリアとかサーラみたいになってやるんだから!!!」

 そう言って、まるでジュースでも飲む勢いで、ミーティアは徳利を一気飲みする。










 「まあ、豊胸の魔法薬も作れないことはないんですけどねぇ・・・」





 「「えっ・・・」」

 徳利の中身全てを飲みほした後、ミーティアとセレナはシルフィリアの言葉に目を見張って驚いていた。

 しかし、それも束の間・・・



 「あり?・・・・・・・」

 いきなりフラフラとしたかと思えば、ミーティアがいきなりその場に倒れこんだ。
 
 どうやらいきなりのアルコールの過剰摂取が祟ったらしい。

 バシャッっと水しぶきを上げ、そのまま動かなくなる。
 そんな事を気にする様子もない義理の姉と魔法医さんは・・・

 「ねぇシルフィリア様!!!豊胸の魔法薬ってエルフにも効果あるの!!!?(セレナ)」

 「私も知りたいな〜・・・長い間魔法医してるけど、そんな薬聞いたことないよ〜(サーラ)」

 「もちろんですぅ〜。エルフだろうがドアーフだろうが、チンパンジーでも効果がありますよ〜。一週間朝昼晩服用し続ければ、バスト1cmアップですよぉ〜・・・」




 「「頂戴!!!!」」
 

 「それだけは解消できない悩みだったの!!!(セレナ)」
 「魔法医としてものすごく興味があるわ!!!(サーラ)」


 「いいですけどぉ〜・・・・私に飲み比べで勝てたらですよぉ〜!!?」


 「「よっしゃぁ!!!!」」


 「おォ!!?なんだなんだ!!飲みくらべか!!!?(アスロック)」


 「俺達もマゼろ!!!(ファルカス)」


 「うぅ・・・どうせ俺なんて・・・俺なんて・・・(チビチビと酒を飲み続けるアリエス)」


 まあ、そんなこんなで・・・


 そろそろ大丈夫だろうかと徳利にどうせもうどっちでもわからないだろうと酒では無く冷水を入れて湯船に持って行ったドローアが露天風呂に行った頃には湯あたりと酔い潰れで死屍累々状態になったあの地獄絵図を見ることになったのであった。



 だが、そこには・・・




 ドローア以外もう一人の視線があったことはこの時点では誰も知らない。



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